ハルヒ北高制服の"青"は一つではない
トワルチェックでシルエットを決めてOKを出しましたら、次は実際の生地を使用して試作に入ります。試作用はサンプルとして何種類かを作るため、量産用に1反を購入するのではなく、使用する生地を必要なだけ数種類をメーター購入します。
今回の『涼宮ハルヒの憂鬱』北高制服のコスプレ衣装では、エヴァンゲリオンのように今後10年以上にわたりコスプレ人気を維持すると考えていますので、まず重要なのは継続して生産できることであり、生地の調達が安定してできることを優先いたします。このため、専用に染めたりすることは考えていませんでした。
生地にも"流行り"や"廃り"があり、カタログラインナップから消え去っていくカラーも数多くあるのです。ここで、生産ロットごとに色が異なるということは避けたいため、メーカー標準のラインナップから一番近いカラーを選択することにしました。
ハルヒのカラーは「青」というイメージが強いのですが、実は原作では「グレー」と言った方が近いカラーになります。カラーチャートからはグレーをベースにして青が入り、若干の緑が入っています。〝学校制服〟ということを考えますと、落ち着いたカラーのグレーというところが本当なのかなとは思います。
ただし、本当に原作のグレーで作ってしまいますと、コスプレとしては非常に「地味!」な衣装になってしまいます。また、世間一般の北高制服のイメージは「青」であり、これは多くの人が目にするアニメの彩色のイメージに大きく影響されています。
原作イラストとアニメではこの"青色"も微妙に違うのです。オマケに言えばフィギュアも違うのと、ハルヒキャラは様々な有名なイラストレーターが描いていますが、みんな「青色」が違います。
衣装を選択しますコスプレイヤーとしては、これらどれをコスプレのベースと考えているかで、様々な"青"の制服衣装が存在してしまいます。これが、「公式衣装」が絶対的な正解では無いと言う所以でもあります。
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コスプレイヤーはそれぞれの考えや感じたままに、自分が表現したい"青色"の制服を選択しています。たとえそれが「公式」であっても、その人がカラーが違うと思えば、その人にとっては「公式」では無くなり選択肢には入らないのです。
コスプレ衣装では質感も大切、本物制服と同じ生地
コスプレで写真を残す場合には、衣装の質感にもこだわる必要があります。衣装の質感も、写真には表現されて残ってしまうからです。
このため、できるだけ実際の制服に近い仕上がりとするために、生地は本物の制服と同じ綿とポリエステルの混紡「TCツイル」とし、防シワ加工や帯電防止繊維を織り込んだものを選択しています。このあたりの生地のコストアップに関しては、量産すれば数百円になってしまいますので、ここは手触りや着心地を優先します。
当然、日本メーカーの製品を使用しています。
ただ、今回の青いツイル生地では希望する厚みのモノが無かったためにカラーを重視、少し薄めの生地の採用となっています。このためセーラー襟にはパリッとした清潔感を出すためちゃんと厚めの芯を入れるように、スカートにも下着のラインが透けないように裏地を付けるようにしています。このあたりも、本物の制服と同じ構造です。
よく中国製のセーラー服のセーラー襟がシワシワでヨレヨレなのがありますが、これは生地のグレードの問題であり"制服"としてはだらしない仕上がりとなってしまいます。
コスプレでは多くの場合、着替えはコスプレ会場で行うことから、会場まで衣装をバッグへ詰め込んで移動するのが一般的です。ここでシワの付きやすい生地を使用していますと、ちゃんと事前にアイロンをかけていても運搬でシワが寄ってしまうことになります。
採用する生地のグレードが重要な理由の一つでもあるわけです。
生地が薄くてもきちんと作れば安っぽくはなりません。それ以前に、裁断と縫製が間違っているという基本中の基本、技術的な問題がありますけれど…
小さな生地サンプルから実際の衣装ができあがった際に、大きな面積になると色の見え方が違うということがよくあります。このため、同系列の生地の色温度を変えて何着かの試作品を作ります。
と同時に、細部の数mm/数cm単位での修正バージョンも試作で確認をします。数ミリ違っただけでもイメージが壊れるかどうかが決まる場合があるのです。