コロナショックはリーマンショック以上の経済損失
ここは経済を語るブログではありませんので、詳細を知りたい方は他をググっていただくといたしまして、今回のコロナショックが私たちの身近でコスプレにどのような影響を与えるのかを考えてみたいと思います。
簡単に説明いたしますと、2008年秋に起きたリーマンショックは銀行の経営状態が悪化してお金が貸せなくなり、企業の資金繰りが悪くなって雇い止めなど給料が払えなくなり、個人消費が落ち込んだということです。対する今回のコロナショックは、ヒトやモノの移動制限により個人の消費が落ち込み、企業の資金繰りが悪化して給料が払えなくなり、さらに人々が物を買わなくなるという逆の循環になっています。
「お金」は経済の血液と言われるくらいに、その流れが悪くなりますと景気が悪化し、私たちの生活にイロイロと影響を与えてきます。経済の上流(銀行)から悪化したのがリーマンショック、下流(個人消費)から悪化しているのがコロナショックと流れは逆ながらも、私たちのお給料に影響してくるのは同じです。
では今回の「コロナショック」は、過去の経済ショックと比較してどのくらい悪いものなのでしょうか。よく比較されるのが「リーマンショック」「バブル崩壊」(日本国内のみのローカル)「世界恐慌」の3つです。
「世界恐慌」(1929年)は誰もが歴史で習ったくらいでしか知りません(今、生きている人のほとんどは経験していない)が、第2次世界大戦の引き金になったことからも、最悪の経済危機だったとされています。今ではこの時の教訓が生かされており、政府による財政出動などの経済学による対応策(10万円給付などもコレ)が確立しており、ここまでひどいことにはならないとされています。
ですが今回のコロナショックは、世界的に経済が止まってしまっており、リーマンショック以上の打撃で最悪だった世界恐慌に迫るとまで言われています。
新型コロナの感染拡大によるコスプレ業界への影響
ご存じのように新型コロナによるパンデミックが起きた3月~4月にかけて、その全てのイベントが中止となりました。コスプレ系のイベントも例に漏れず、3月以降の全てが中止となっています。
これにより、コスプレをすることが呼吸のようなコスプレイヤーやコスプレカメラマンにとっては、この数ヶ月間の外出自粛期間は「コスプレしたい欲求」が募るばかりで生殺しのような日々をきっと送っていたことでしょう。
個人はまだ多くの人で余裕があることから、コスプレイベントが再開する日を夢見て、コスプレ衣装やウィッグを準備してキャラクターの作り込みには余念がないはずです。
ところが、問題なのはイベントを主催する側の企業、サークル側にあります。イベント主催者側は、数ヶ月にわたり収入の手段を断たれてしまうことから、存続が危うくなってくるところも少なくないはずです。
大規模なイベントを企画するイベンターほど、事務所や倉庫を借りていたり正社員を雇っていたりします。こういった月額の固定費がイベント収入が無いと支払えないことから、コスプレイベントからの撤退や倒産することも考えられるのです。
では緊急事態宣言の解除、あるいは東京アラートの解除によってコスプレイベントの開催が可能になるかと言えば、ことはそう簡単ではありません。自分の開催イベントから、新型コロナに感染したクラスターを発生させるわけにはいかないからです。
もしクラスターを発生させてしまえば、コスプレ外の世間から猛バッシングを浴びることは必至であり、それこそ再起はできなくなります。
感染防止策を講じながらコスプレイベント開催にこぎ着けたとしましても、手指消毒用アルコールの準備などのコストは重くのしかかります。またソーシャルディスタンスで間隔を空けるとなれば、入場者人数を通常の半分以下へ制限しなくてはならず、そうなりますと収入面でも減収となります。ヘタをしたら施設のレンタル料すら支払えないことになるかもしれません。
そこまでの大きなリスクを抱えながらでは、コスプレイベントは開催できないということになるわけです。
まずは人数の少なく感染者が出ていない地方イベントから、そして施設利用料が安い施設から再開されることにはなるでしょう。いまだに感染者が出ている東京などでは、人が集まることと一人でもキャリアが混じるとクラスターが発生してしまうことからコスプレイベントの開催は難しいと考えます。実際に、9月のゲームショウのリアルでの開催はすでに中止が決定しています。
リーマンショック、次々消えたコスプレ衣装ショップ
コスプレイベントの開催が中止となることは、コミュニケーション手段としてのコスプレという魅力は半減となってしまいますが、人が集まらない個人撮影やスタジオ撮影などで代替えが効くものではあります。その点からすれば、外出自粛が明ければコスプレを行うことは可能であり、影響は最小限に抑えられます。
最大の問題は、私たちのお財布に影響を及ぼすことです。
リーマンショックからはもう10年以上昔の話になるわけですが、今のOver20のコスプレイヤーさん達でもほとんどの人はこの時のことを経験はしていないということになります。どのようなことが起きていたかを振り返ってみますと、今回のコロナショックでも気をつける点が見えてきます。
リーマンショックの時にコスプレ業界で何が起きていたのかと言いますと、コスプレ衣装ショップが次々と閉店をしていました。それも閉店をきちんと告知して後処理をして・・・というちゃんとした形では無く、ある日いきなりWebサイトが無くなっていた、電話連絡が取れなくなったというようなものです。
中には受注をできるだけ受けて衣装を発送せず、取り込み詐欺のようなことを行い夜逃げ同然でドロンしたショップもあります。このショップの郵便受けにはNTTや電気料金といった公共料金の督促状や、佐川急便の支払い督促状が突っ込まれたまま放置されており、個人の購入者と思われる督促状なども刺さったまま放置されていました。
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つまりは、今のコロナ禍においてコスプレユーザーからの視点で注意をするべきは、コスプレ衣装に限らずウィッグなども含めて、お金を払い込んだ後に商品が届かずショップと連絡が取れなくなる事態を想定しなければならないということです。これは即納であれば問題はありませんが、発送までの1週間とか2週間と間がある場合、オーダーで1ヵ月くらいかかる場合などで特に注意が必要となります。
できれば今、納品まで時間がかかるようなコスプレ衣装のオーダーは控えることをお勧めいたします。
悪意があるような場合ですと、「コロナ禍割引き」などを理由にして運転資金を集めるような動きをしていることもあります。イベントが中止されている以上、これは需要の先食いでしか無く後々の資金繰りが苦しくなっていくのは確実であり、愚策でもあります。取り込み詐欺を意図していないまでも、現金を集められるだけ集めて計画倒産が考えられます。
現在、新型コロナ禍により人の移動制限がかけられており航空機が減便されています。これにより航空機の空いた貨物室を使うSAL便も減少、海外からの物流が滞るようになっており、これを理由に商品発送をワザと遅らせるケースがあります。こういった、自社以外の要因を納品遅延の「言い訳」に使う場合も、資金繰りが切羽詰まっている証拠ですので要注意です。
こういった取り込み詐欺への対応としましては、クレジットカードで支払うとか荷物の発送と同時に決済されるショップを利用するようにしましょう。
固定費が重くのしかかるコスプレ衣装ショップに注意!?
なぜ、景気が悪くなるとコスプレ衣装ショップは閉店してしまうのでしょうか。
多くのコスプレ衣装ショップでは、ショップ単体で経営を行なってはいません。必ず他にも収益源があり、言わばコスプレ衣装販売の方がサブであることも多いのです。
リーマンショック('08年秋)以前のコスプレバブルでは、それ以前の2000年代初頭のITバブルで利益を得ていた「出会い系などのシステム製作会社」が、そのショッピングカートを構築できるノウハウを用いてコスプレ衣装販売へ参入してきている例が多く見られました。
ここで大きな経済ショックがやって来ますと、コスプレ衣装ショップが経営不振になるというよりも、他のメインに行っているビジネスが経営全体の足を引っ張る形となり、収益が低いコスプレ衣装販売が立ちゆかなくなるという構図になっています。
今回のコロナショックのコスプレ業界への影響は、実際のイベント自粛が起きた3~5月ではなく、この期間の収入が入ってくる2~3ヵ月後に現われます。その時の家賃や光熱費の支払い、従業員への給与の支払いとなる6月~資金繰りが悪化するショップは多くなると予想されます。つまり、これから2~3ヶ月間はWebサイトが無くなるなどの注意をする必要があります。
では、どのようなショップを注意すればよいのでしょうか?
- 実店舗や事務所を借りているショップ
家賃の他、電気水道代といった光熱費の支払いも収入が途絶えている場合には負担になります。 - 正社員を雇っているショップ
バイトは休めば給与は発生しませんが、正社員は減額給与の他に社会保険など固定費の支払いが発生します。 - 多角化経営で複数の事業を行っているショップ
IT系の事業を並行していたり、メイド喫茶を運営していたりする場合があります。
単純にこれらの条件に当てはまると「アウト!」というわけではありませんが、それだけリスクが高まるということです。政府や自治体の企業支援策を活用しながら現金を用意するとは思いますが、それでも長期化すれば限界はあります。
さらに厄介なのは、今回のコロナショックではこの期間を乗り切れれば終わるというものではなく、再びインフルエンザが流行る10月以降に第2波が予想されていることにあります。100年前のスペイン風邪(インフルエンザ)では、第2波がより大きく厳しかったとされています。
スペイン風邪の時には終息するまでに3年かかっており、この激動に対応出来ない、耐えられる体力が無いショップは消えていくことになります。
この倒産までには至らなくても、利益が小さくなりメリットが薄れれば、コスプレ業界からは撤退するという選択肢は十分に考えられるわけです。
倒産・撤退の徴候というのは判るものなのでしょうか。これも"絶対"とは言い切れないのですが、リーマンショックの時からある程度の傾向は見て取れます。
- 納品が予定よりも大きく遅れる
従業員に給与が支払われていない可能性があります、人を減らした結果予定通りに仕上がりません。 - 納品予定日が延期に次ぐ延期
資金繰りが苦しく支払いを優先して自転車操業に陥っている可能性があります。 - 値引きセールを行う
少しでも支払いへ回す現金が欲しい場合があります。 - ショップ名の改名を行う
「コスララ」が「ブルーローズ」へと改名後、ほどなくして消滅しました。ブランドイメージが高かったのに改名の理由が見当たりません。
さて、新型コロナの感染からマスクや手洗いで自衛をすることは勿論ですが、こういった経済的な危機からも自衛をする必要があるのです。リーマンショックから学べることを、今回の新型コロナショックにも生かせるのではないでしょうか。